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マーケティング2023.5.2

医療広告規制とガイドライン【2023年5月時点】

この記事は眼科専門の経営コンサルタントの西條が執筆しています。

■医療広告規制(ガイドライン)とは

医療広告については以下のように禁止されてきました

医療広告は、患者等の利用者保護の観点から、次のような考え方に基づき、限定的に認められた事項以外は、原則として広告が禁止されてきたところである。
① 医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しいこと。
② 医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難であること。

医療広告ガイドラインより

医療広告規制は医療に関する広告に対して設けられている規制で、ガイドラインは厚生労働省が公表している広告に関する指針です。

眼科クリニックの院長先生方が気にされるそもそもどのようなものが対象となるのか、ホームページは対象となるのか、どのような内容が規制されるのか、についてお伝えしていきます。
さらに、コンサルタントの観点から、広告規制の内容を踏まえた上で効果的なマーケティングを行うポイントについてもお伝えします。

■対象となる広告は

広告の定義としては、次の2つの要件をいずれも満たす場合に医療広告に該当する、と規定されています。

① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
医療広告ガイドラインで具体的に例示されている広告媒体としては

【具体例】
ア チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)
イ ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの
ウ 新聞、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む。)、映写又は電光によるもの
エ 情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)
オ 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演述によるもの

医療広告ガイドラインより

が挙げられています。

ただし、上記に例示されている媒体を使用してはいけない、ということでは無く、広告可能な事柄であれば広告は可能です。

・ホームページは広告規制の対象となるのか?

先生方からよく「ホームページは広告規制の対象となるのでしょうか?」というご質問を頂戴します。結論から申し上げますとホームページも広告規制の対象となります。

従来ホームページは規制の対象外とされていましたが、美容医療に関する相談が増加した結果、平成29年法律第57号により規制の対象となりました。
しかし、他の広告媒体とは異なり、一定の条件の下に広告可能事項の限定を解除することとされています。

ですから、正しくはホームページも広告規制の対象ではありますが、条件を満たすことで広告できる事項の限定が解除されます

限定が解除される条件

広告できる事項の限定を解除するための要件は以下のように規定されています。

広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の①~④のいずれも満たした場合とする。
ただし、③及び④については自由診療について情報を提供する場合に限る。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

医療広告ガイドラインより

ウェブサイトその他これに準じる広告であること、とされていますが、リスティング広告のような費用を支払うものについては限定解除の対象外とされていますので注意が必要です。

・医療広告規制とコンサルタントの観点

医療広告ガイドラインでは「院内掲示、院内で配布するパンフレット等」は、医療広告とは見なされないとされています。これは院内掲示や院内で配布するパンフレット等はその情報を受ける対象が、既に受診している患者に限定されるためで、広告とみなされる要件の一つである誘引性を満たさないと解釈されるためです。

ですから、広告では規制されている内容でも院内掲示、院内での配布が可能ということです。
例えば手術のビフォーアフターの写真等は広告することができませんが、眼瞼下垂の手術を実施している眼科クリニックにおいて、自院だけで掲示・配布するパンフレット等で術前後の写真を掲載し、手術のイメージをわかりやすく伝えることも可能ということです。
ただし、自院以外でもパンフレットを配布する場合、「誘引性」と「特定性」を満たすと判断された場合、広告扱いとなります。

■禁止される広告内容の考え方

以下の広告は禁止されています。

・比較優良広告
・誇大広告
・公序良俗に反する内容の広告
・患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告
・治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告

・眼科で気をつけたいよくある違反

診療科目を問わずよくある違反が、資格についての表現です。
資格については「医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について」が定められています。
専門医の資格は広告可能な事柄ですが、広告に当たっては「医師○○○○(××学会
認定××専門医)」のように、認定団体の名称を資格名とともに示す必要があります。と定められています。ですから単に〇〇専門医、という表現は広告できないと定められています。
また、指導医や認定医などの表現は広告できる資格名に定められていませんので、広告できません。

ただし、限定解除の要件をみたしたホームページであれば「〇〇専門医」「指導医」「認定医」などの掲載が可能です。

設備投資に積極的な眼科でよく見られる「最新の検査機器」「最新の手術機器」という表現も注意が必要です。
ガイドラインにおいて、医学的、社会的な常識の範囲で事実と認められるものであれば、必ずしも禁止される表現では無い、とされる一方、より新しい治療法や医療機器が定着したと認められる時点においても、「最新」との表現を使用することは、虚偽広告や誇大広告に該当するおそれがあります。とされています。
広告が古くなっている場合、知らぬ間に違反していた、ということがありますので注意しましょう。

類似した内容で、「最先端の医療」は「最先端」が誇大広告にあたるとされており、こちらは禁止されています。

緑内障外来、ドライアイ外来などの表現も限定解除の要件を満たしたホームページ以外では広告できません。看板などに掲載すると違反となります。

手術前と手術後の写真、いわゆるビフォーアフターの写真の掲載が認められていないことは広く認識されるところですが、手術前のみ、手術後のみの写真の掲載も広告できないとされています。
医療広告ガイドラインに関するQ&A

これらのように、広告できる事柄と限定解除の要件を満たしたホームページであれば掲載できる事柄に違いがありますので広告する内容については確認されることをお勧めいたします。

広告内容に不安がある場合は保健所に問い合わせていただくと内容を確認していただけます。保健所によって回答が出るまでの期間や対応には差がありますので、ポスティングなど広告時期が予め定まっている場合は早めに問い合わせされることをお勧めします。

■医療広告規制に違反した場合どうなる?

広告規制に違反した場合、ただちに罰則があるものではありません。
ガイドラインには広告違反の指導及び措置について具体的に記載されていますが、個別の事例に応じて柔軟に対応すべき、とされています。

指導及び措置についての流れは以下のように占めされています。
ア 調査及び行政指導
イ 報告命令又は立入検査
ウ 中止命令又は是正命令
エ 告発
オ 行政処分

事前の措置に従わない場合に次の段階の措置に入るとされていますので、違反してしまった場合や、違反を指摘された場合は速やかに是正するようにしましょう。

告発の段階には懲役や罰金の罰則が明示されており、行政処分については「病院又は診療所の開設の許可の取り消し、又は開設者に対し、期間を定めて、その閉鎖を命ずることが可能」とされていますので、必ず是正対応しましょう。

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