時事情報・その他

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時事情報・その他2026.4.3

ベースアップ評価料の届出は必要?令和8年度の改定内容と判断ポイント

令和8年度の診療報酬改定において、「外来・在宅ベースアップ評価料」が大きな注目を集めています。

届出や毎年の報告の煩雑さから、事務負担の割に合わないと感じ、
届出を見送っている先生方も多いのではないでしょうか。

実際にベースアップ評価料の届出を行ったクリニックの割合は、
2025年3月時点の集計では医科診療所では30.1%とされています。


出典:疑義解釈資料の送付について(その1)(令和6 年3 月28 日)

眼科においては「短期滞在手術基本料1」が679点の引き下げになるなど、
経営へのマイナス面での影響が印象に残る中、
点数の引き上げが目を引くベースアップ評価料をどのように捉えるべきか。

今回は、改定の概要とあわせて整理をしていきます。

 

令和8年度ベースアップ評価料の改定概要

今回の改定では、対象範囲の拡大と点数の大幅な引き上げにより、
賃金の改定において大きな影響を与える制度となっています。

 

1.対象範囲の拡大と賃上げ目標水準の設定

これまでのベースアップ評価料は、算定の対象が「主として医療に従事する職員」に限られていました。

今回の改定により対象範囲が「当該保険医療機関に勤務する職員」に拡大し、
初診料・再診料の引き上げ分で賃上げを対応すること とされていた
医療事務、受付事務も算定対象となりました。

また賃上げの目標として、「令和8年度に3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)、
令和9年度にさらに3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)の賃上げを目指す」と示されています。

出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】

 

2.算定点数の引き上げ

ベースアップ評価料(Ⅰ)の初診時と再診料が引き上げられます。

・初診料6点 → 17点(+11点)
・再診料2点 → 4点(+2点)

 

さらに、令和9年6月にはベースアップ評価料の算定点数が2倍に引き上げられ、
継続して賃上げを行った場合、
初診料は令和8年6月からは23点、令和9年6月には40点の算定が可能となります。


出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】

 

 

また、ベースアップ評価料の評価体系が見直しされ、
継続的に賃上げを行っている医療機関と、そうでない医療機関で異なる評価が行われます。

 

出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】

賃上げ金額のシミュレーション

月間の患者数が1,000人、うち初診患者の割合が3割、スタッフ数が8人のクリニックを想定し、
ベースアップ評価料(1)の点数を簡単にシミュレーションします。

現在から令和8年5月中は初診6点、再診2点の算定のため、

・(初診)300人×6点+(再診)700人×2点=月3,200点
ここから法定福利費16.5%を加味すると、32,000円÷1.165=27,580円になり、
この金額をスタッフ8人で均等に分配をすると、1人当たり月額約3,400円が賃上げ可能になります。

令和8年6月以降(初診:23点、再診:6点)の場合:月11,100点
111,000円÷1.165÷8人=月額約11,900円/人

令和9年6月以降(初診:40点、再診:10点)の場合;月19,000点
190,000円÷1.165÷8人=月額約20,300円/人  が試算上で賃上げできる金額となります。

実際の賃上げ額は患者数や配分によって変動するため、
あくまで参考程度のものとなりますが、上手に活用をすれば
ベースアップ評価料が採用難の改善策の一つとして活用が可能とも捉えられます。

なお、今回の試算では一律で賃上げしていますが、
制度上は対象職員に応じて賃金改善額に差をつけることができます。

出典:疑義解釈資料の送付について(その1)(令和6 年3 月28 日)

ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出は、採用時にも大きな影響が出る可能性があります。

医院がベースアップ評価料に対応しているかどうかによって募集賃金に差が生じ、
求職者が待遇面を比較する際の重要な判断材料の一つとなり得ます。

ベースアップ評価料を算定することで、採用時に賃金面で他院と差別化が可能になるだけでなく、
既存のスタッフを含む医療従事者が、賃金が理由で他業種への流出を防止することにも繋がります。

今からでも間に合う?未届出クリニックへの救済措置

令和8年3月末時点でベースアップ評価料(1)の算定を行っていない医院であっても、
要件を満たす賃上げを実施していた場合は算定が認められる救済措置が発表されました。

ベースアップ評価料の支給対象となるスタッフについて、
令和8年度の基本給等の合計が、令和6年3月時点の基本給等の総額と比較して、

看護師や視能訓練士は5.5%、事務職員は8%に相当する賃上げが行われていた場合、
令和7年度までに届出を行っていたクリニックと同様の点数を算定することが可能となります。

 

出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】

賃上げの状況を所定の様式(様式98)に記載のうえ届出を行うことで、
令和8年3月までに届出を行った医療機関と同等の点数
(令和8年6月~:初診料23点、再診料6点)を算定することが可能となります。

ベースアップ評価料の届出手続きと年間実績報告

ベースアップ評価料(1)の届出が、令和8年度の改定にてより簡素化される予定です(執筆時点では未公開)。

おおよその内容としては、これまで届出時に作成していた「賃金改善計画書」の作成が不要になり、
ベースアップ評価料(1)のみの届出であれば、申請時は対象職員のみがわかれば申請ができるようになる模様です。

出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】

また、現行では6月に当該年度の「賃金改善計画書」、
8月に前年度の「賃金改善実績報告書」の提出が求められていましたが、
今回の改定により、6月の「賃金改善計画書」の提出は不要となります。

 

賃金改善「中間報告」と「実績報告」について~改定の前後での違い~

【現行】
・6月に「賃金改善計画書(当該年度分)」を提出
・8月に「賃金改善実績報告書(前年度分)」を提出

【改定後】(令和8年度から)
・8月に2種類「賃金改善中間報告書(当該年度分)」および「賃金改善実績報告書(前年度分)」
を作成し提出= 8月にまとめて報告を行う形となります。

出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】

 

令和8年3月1日からベースアップ評価料(1)の算定を開始し
令和8年度以降も継続して賃上げを実施するクリニックの場合は、8月に2種類の報告書の提出が必要になります。

① 令和7年度実績分の「賃金改善実績報告書」
② 令和8年度「賃金改善中間報告書」

この報告書は、確実に賃金改善にあてているかを確認するためのもので、
医院全体の賃金改善を報告するものとなっています。

なお、対象職種ごとの「常勤換算数」は、計算式としては
パートの労働時間÷フルタイムの労働時間=常勤換算人数 となります。

例:
スタッフ8人のうち常勤が5人、パートタイマーが3人の場合で、
フルタイムの週の勤務時間が40時間、パートが20時間とした場合

20時間(パートタイム勤務時間)÷40時間(フルタイム勤務時間)×3人=1.5人
フルタイム5人+パートタイマーの常勤換算1.5人=計6.5人 となります。

施設ごとから「法人単位」へ、「同一法人内の複数医療機関の通算」が新設

今回の改定から、ベースアップ評価料の賃金改善実績報告書・中間報告書に法人用ができ、
法人の報告は一つで完結する形となります。

各クリニックで算定したベースアップ評価料(1)を合算し、
法人が管理する各クリニックに按分し賃金改善が可能になります。

出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【医科全体版】

まとめ

今回の改定により、対象範囲の拡大と点数引き上げが同時に行われ、
これまで以上に活用メリットの大きい制度となっています。

医療業界における人材流出の抑止や物価上昇への対応という観点からも、
今後はベースアップ評価料の活用が一層重要になると考えられます。

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